今改めてレディースの
難しさと奥深さを感じる。
女性を服で幸せにしたい。
INTERVIEW with《KENJI HIKINO》Vol.2
2017.12.25 Mon
小林:その後、メンズのデザインをやろうと思ったことは無かったんですか?
引野:通っていた専門学校のカリキュラムも基本的にはレディースでしたし、特に無かったですね。理由はわかりませんが、レディースへの思いが強かったと思います。
小林:僕も学生時代に服を作っていたことがあるんですが、服を作る=レディースという認識でした。特に明確な理由があったわけでは無かったと思うんですけど、作るとなったらレディースっていうのは先入観としてあったように思います。
引野:先ほどお話したYohji Yamamotoのコレクションに衝撃を受けて、服を作ることを決めたので他に自分の中で選択肢が無かったということでしょうか。あとは、レディースの方が表現の幅が広いので、見ていても楽しかったといのはあるかもしれないですね。専門学校からちょうど10年女性の服を作ってきて今改めてレディースの難しさを奥深さを感じています。だからこそ、レディースが好きです。女性を服で幸せにしたい。
小林:確かにそうですね。でも、引野さんの服を見る度に自分が着られないのが残念だと思うので、メンズがあれば良いのになとは感じますね。今後もメンズを展開する可能性はないんですか?
引野:メンズもやってみたいですね。自分が子供の頃は、背が低いことがコンプレックスだったので、小さい時から服を選ぶ時には着丈のバランス感やサイズ感をよく考えて選んでいました。それがレディースのデザインにも反映されているかもしれないですね。そういったこともあるので、メンズについては小柄な男性がカッコよく着られる服を提案していきたいですね。
小林:今後、もしメンズをやるとしたら自分が着ることが前提ということですよね。
《Keiji Hikino homme》も見てみたいです!笑
引野:もしメンズを本格的にやる時はブランド名は別でつけたいと思っているのですが、有難いことにメンズを作って欲しいという声が増えてきたので、次の2018AWでは試験的にではありますが、男性でも着れるようにアウターはこれまでより、マニッシュにしていて、ユニセックスで着ることの出来るアイテムをいくつか用意しています。
小林:ブランド名でいうと、例えばcomme des garconのように自分の名前とは違うブランド名をつける選択肢もあったと思うんでが、引野さんはなぜ自分の名前をブランド名に冠したのでしょうか?
引野:ブランドを始める時、ファッションデザイナーとしてというよりも、一人の作家として始めようという意識が強かったですし、最初はパターンから縫製まで全て一人で始めたので、ファッションデザイナーってチームで動くことが多いと思うのですが、そういうやり方ではないので、自分の名前で始めることにしました。それと、始めた当時は今ほど自分の名前を冠しているブランドが多くなかったんじゃないかなと思います。
小林:今は東コレを見ていても、自分の名前をブランド名にしている人も多くなって半々くらいなのかなっていう印象がありますよね。ヨーロッパはデザイナーの名前がブランド名になっていることが多い印象があります。海外も含めてランウェイショーをしてみたいと考えることはありませんか?
引野:実際にショーを見るとやってみたいなと思うことはあります。自分が作る服は一見シンプルなものが多く、試着してもらうと良さがわかってもらえるものが多いので、いわゆるランウェイに限らず服を着用してもらった状態で見てもらえる機会は作れたらいいなと思います。
小林:もしショーをやるとしたら、ショーをやる理由みたいなのも必要というか、重要ですよね。
引野:そうですね。ショーをやれば業界紙に取り上げてもらって業界の方の目に触れる機会が多くなるとか影響はあるにかなと思うのですが、自分がどこかのブランドのショーを見たいなと思ってもなかなか見ることは出来ないですし、そういうところは閉じられている感じがあるので、もっと一般の人が見ることの出来る機会が増えると良いとは思いますよね。
小林:どうしても業界感が強いですよね。先日見た《Keisuke Yoshida》のショーでも、若い学生がショーを見るために並んでいて、彼らの熱量が伝わってきたのが印象的だったので、そういう機会が作れるのはいいなと思いました。ショーの必然性云々で言うとわかりませんが、引野さんがショーを開催したらそういう子たちは集まるんじゃないかと思います。
引野:どうなんでしょうね。笑 うちは10代や20代前半のお客様が多くはないので学生のような若い方々が集まって頂けるのかはわからないです。
小林:学生で言うと、引野さんは専門学校で教鞭も取られていらっしゃいますよね?具体的にはどういった事を教えられているんですか?
引野:ファッションデザインです。一年生を任されることが多いのですが、テーマやコンセプトを学生たちと相談し、デザインを起こして、実際に仮縫いまでを一緒にやっています。彼らがパターンの授業で作ったトワルを、僕と一緒に本人が納得する形になるまでなおしていきます。
小林:自分でデザインするのと人に教えるのは違うと思いますが、学生に教えるのは楽しいいですか?
引野:とても楽しいですよ。みんなとても純粋でかわいいです。新しい次の才能達と一緒に服作りが出来ることは幸せです。